マネーの魔術史 (26)

日清戦争と金本位確立の離れ業に成功した明治政府

執筆者:野口悠紀雄 2017年11月23日
タグ: 日本 5G
エリア: アジア
国立銀行が発行した、日本初の紙幣 (C)時事

 

 前回見たように、明治の通貨制度も、財政状況も、確固としたものではなかった。

 大量の金が国外へ流出していたため、名目的には金本位を採用したものの、実際には銀本位であった。また、政府紙幣の信用は著しく低下していた。

 そして戊辰戦争(1868~1869年)や西南戦争(1877年)の出費を賄うために、太政官札や国立銀行の不換紙幣が大量に発行され、それがインフレを引き起こした。これらの戦争の出費は、インフレという形の税によって、国民に押し付けられたのである。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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