「カーター訪朝」で露見した金正日の外交手腕劣化

執筆者:平井久志 2011年5月9日
エリア: 北米 アジア
4月28日、訪朝を終えてソウルで記者会見するカーター元米大統領(左)とブルントラント元ノルウェー首相 (C)AFP=時事
4月28日、訪朝を終えてソウルで記者会見するカーター元米大統領(左)とブルントラント元ノルウェー首相 (C)AFP=時事

 3月11日の東日本大震災の甚大な被害と福島原発災害によりメディアの国際報道が薄くなっているが、リビアを含めた中東情勢や朝鮮半島情勢は依然として注視が必要な状況であることに変わりない。新聞やテレビという既存メディアが紙面や時間帯という制約を受けるなかで、本サイトを含めたネットメディアの役割はより重要になっているのかも知れない。  北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は4月の最高人民会議で、3男の後継者、金正恩(キム・ジョンウン)党中央軍事委副委員長やその後見人である李英鎬(リ・ヨンホ)軍総参謀長らを国防委員会入りさせず、後継体制の進展にブレーキを掛けた。旧軍部を代表する呉克烈(オ・グクリョル)国防委副委員長もそのポストを維持した。金総書記は内政では後継勢力の台頭による権力の2元化を抑え、自らの独裁体制を堅持するしたたかさをみせた。  しかし、4月26日から28日までのカーター元米大統領ら国際人道グループ「エルダーズ」代表団の訪朝をめぐる状況の推移は、金総書記の外交手腕の低下を如実に見せつけた。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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