「スイスの金融機関にとって最も重要なものは何だと思う?」
東日本大震災から1カ月余りたったある日。スイスを訪ねた日本の投資銀行の幹部は、会食の席でプライベートバンクの経営者から、こんな質問を投げかけられたという。
スイスの銀行と言えば、地下金庫に眠る金塊を思い浮かべる人が多いだろう。だが、経営者の答えはそうした金塊でも、宝石類でも証書類でもなかった。
今やスイスの金融機関の生命線は顧客データそのもの。つまりデジタルデータだというのだ。
日本の銀行幹部は膝をたたいた。というのも、東日本大震災では津波によって金融機関のコンピューターが流されたり、地方自治体が管理する住民基本台帳が失われて、大きな問題になっていたからだ。
また震災直後には、みずほ銀行のシステムトラブルが発生。1週間にわたって、振り込みができなくなったり、現金自動預け払い機(ATM)が停止して、現金が引き出せなくなるなど、大きな社会問題になった。顧客のデータが何よりも大事だというスイスの銀行家の話に、反論の余地は無かった。
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