米国は世界最大のサイバー被害を受けている――報道から見る限り、米国がそんな深刻な危険な状況に見舞われているような印象がある。
オバマ米大統領は1月の一般教書演説で「増大するサイバー攻撃の脅威に対応する」と明言した。米国防総省が発表した2013会計年度の国防予算案でも、高額兵器の調達費を削減する一方、サイバー攻撃対策を重点項目の一つに掲げた。
特に中国のサイバー攻撃能力に対する警戒感が高まっている。米太平洋軍の次期司令官に指名されたロックリア海軍大将は2月上院軍事委員会で、中国が米軍のコンピューターシステムを狙ったサイバー攻撃能力を向上させ、「潜在的脅威」になっていると警戒感を露わにした。米側の知的財産情報などを盗んで「防衛産業を発展させる」ことも狙っているとも指摘した。実際、中国は次期主力戦闘機F35の技術情報を盗んだと報道されている。
ワシントン・ポスト紙は昨年12月16日の社説で米政府・軍、民間企業を標的にした中国のサイバー攻撃に対して中国と対決するよう訴え、中国側が対策を取らない場合は制裁措置を検討すべきだと政府や議会に求め、メディアも対中サイバー対策を求めている。
実はその裏で、米国はサイバー攻撃の展開に向けて、法的・財政的整備を進めていることがあらためて明るみに出た。
米議会に昨年末採択された2012年度国防権限法の上下両院協議会報告書は、「米国及び同盟諸国の国益を守るため、大統領の命令を受けてサイバースペースでの攻撃作戦を展開することを承認する」と明記していることが分かった。ただ、この攻撃的サイバー作戦の承認は、「戦争関係法規および開戦に当たって議会との協議を定めた戦争権限法に準じること」を条件にしている。しかし、サイバー戦争は敵を見分けることが容易ではなく、個別的・具体的な法的判断は容易ではない。だが、一般的な形式にせよ、議会でサイバー戦争が承認されたのは初めてとみられる。
米国が世界最強のサイバー戦闘能力を持つことは周知の事実で、秘密裏にイランの核施設などにサイバー攻撃を加えたことなどが伝えられている。中国のサイバー攻撃に関する報道などは、米国のサイバー攻撃力強化に向けて、軍事技術、法律、財政的整備を正当化する宣伝材料に使われている、とみてもいいだろう。
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