大統領候補討論会で踏みとどまったロムニー

執筆者:足立正彦 2012年10月5日
エリア: 北米

 10月3日、コロラド州デンバーのコロラド大学で第1回の大統領候補討論会が行なわれた。現職バラク・オバマ大統領とミット・ロムニー共和党大統領候補が経済・内政問題を巡り議論を展開した。筆者も、雇用創出、税制改正、財政赤字削減問題、政府給付プログラム改革、経済規制の見直し、医療保険制度、政府の役割などを議題とした1時間30分に及ぶ討論会をライブ中継で観ていたが、ロムニー候補はオバマ政権発足以降のオバマ大統領の経済運営の失政に焦点を当てつつ、終始優勢に議論を展開していたとの印象を受けた。

 冒頭からロムニー候補はオバマ大統領の過去4年間の経済政策は誤りであり、財政赤字を半減するとの公約を掲げていたにもかかわらず、実際には財政赤字は倍増した、と非常に分かりやすい議論を展開した上で、米国は過去4年間とは異なる道を歩む必要性があると訴えた。オバマ大統領が政権発足以降、積極的に推進してきたグリーン・エネルギー分野へ連邦政府の一連の支援策についてもいかに非効率的であったかを繰り返し指摘しつつ、オバマ政権の経済政策の基本は、増税、歳出の拡大、規制強化であったとの厳しい批判を行なった。こうした批判は、オバマ政権の財政出動路線に猛反発していた共和党保守派勢力を活気づける上でも、非常に有効ではなかったかと考えられる。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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