財務省が「成長戦略」に本腰を入れ始めた。消費税率引き上げの最終判断を閣議で行なう来年秋に向けて、何としても景気を上向き基調にもっていきたいという財務省なりの判断が背景にある。これまで政府が策定してきた「新成長戦略」や「日本再生戦略」は経済産業省が主導してきたが、財政支出や政府系金融機関の活用、税制改正といった財務省が握る権限を総動員してデフレ脱却を目指す方向に舵を切ったのである。
「ごり押し」増税を諦めさせた安倍新総裁の誕生
社会保障と税の一体改革関連法案が成立したことで、消費税率は2014年4月に現行の5%から8%に引き上げ、2015年10月にはさらに10%にすることが決まっている。ただし、「景気条項」では、経済環境が急変した場合には増税を見合わせることになっている。どの程度の経済状況で増税を見送るかは来年秋の時点で政権を握っている内閣の意向次第ということになる。 現在の野田佳彦内閣は「努力目標」として国内総生産(GDP)の成長率で名目3%、物価上昇分を除いた実質で2%と明示している。しかし、民主党の藤井裕久税制調査会長は8月の時事通信のインタビューで「(実質2%は)あくまで目標であり、条件ではない。実質1%成長なら、十分に消費増税は実施できる」と述べている。何としても増税を実現したい財務省としてもハードルを低くしておきたいのは当然で、財務省幹部も「現実的にはそんな線だろう」と語っている。 だが「実質1%」となると、デフレが収束しなくても増税はできるという意味にも取れてしまう。しかし、さすがにそんな「ごり押し」での増税は通らないのではないか、という情勢になっている。 きっかけは、自民党の安倍晋三総裁の誕生だ。当初の予想を覆して総裁選に勝利した安倍氏は、デフレから脱却する前に消費税率を引き上げることに否定的な姿勢を見せている。来年秋の閣議決定時には安倍氏が首相になっている可能性が出てきているだけに、財務省としては安倍氏を納得させるだけの「デフレ脱却」の状態にもっていくことが絶対命題になっているのだ。
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