コソボ問題「セルビアの歴史的譲歩」に一抹の不安

執筆者:佐藤伸行 2013年5月1日
タグ: NATO
エリア: ヨーロッパ

「セルビア人は純朴で気のいい連中だが、1度世界をだましてやろうと腹を決めれば、他のどんな民族よりも狡猾ないかさま師になることができる」

 1990年代の旧ユーゴスラビア紛争のさなか、セルビア人に対するそんな民族評を繰り返し聞かされたものだった。「バルカンのキツネ」と呼ばれた故スロボダン・ミロシェビッチ・ユーゴ大統領(2006年、収監先の旧ユーゴ国際戦犯法廷で急死)やボスニア・ヘルツェゴビナ内戦で大虐殺を繰り広げたカラジッチ被告(公判中)は、世界の大物外交官らを次々に手玉に取り、譲歩したと見せかけては裏をかき、和平仲介者を愚弄し続けたのだった。

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執筆者プロフィール
佐藤伸行(さとうのぶゆき) 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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