クリミアへの旅(6)「ジェノサイド」を語り継ぐタタール人作家 

執筆者:国末憲人 2014年10月15日
エリア: ヨーロッパ
 来し方をたんたんと語る……(筆者撮影、以下同)
来し方をたんたんと語る……(筆者撮影、以下同)

 ウクライナ・クリミア半島の少数民族クリミア・タタール人は、15世紀から18世紀にかけてこの地を支配したクリミア・ハン国の住民の子孫だといわれている。多くは穏健なスンニ派イスラム教徒で、トルコ語系の言語を話す。

 1944年、彼らはスターリンから対独協力の嫌疑をかけられ、中央アジアに強制移住させられた。この時の飢餓や強制労働による死者は、民族の半数近くに達したといわれる。ソ連崩壊の直前から故郷クリミア半島に帰還する運動が盛んになり、半島での現在の人口は27万人前後になった。ソ連とロシアに対する不信感が根強く、ロシアによる今年3月のクリミア半島併合にも激しく反発した。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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