世界経済の展開を、原因に対する結果、という単純な因果関係で記述することはもはや難しい。「窮まればすなわち転ず」という多次元的な展開軸に沿ったストーリー(物語)を理解するためには、少なくとも手元に万華鏡を置かねばなるまい。手回しすれば風景が一変するという機微こそが認識上の心得だ。 グローバリズムに対して米国の草の根での反発が確認されたのは、二〇〇六年の中間選挙を控えての頃であった。起承転結の「起」に相当したのが、ドバイ・ポーツ・ワールドというアラブ首長国連邦の港湾運営会社による、米国の主要港湾管理会社取得の動きだった。この年の春に、米国議会は反対一色となり、彼らの対米投資は急遽中止となったのだ。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン