今年十月、四人の日本人がノーベル賞を受賞した。そのうち物理学賞の南部陽一郎シカゴ大名誉教授(八七)と化学賞の下村脩ボストン大名誉教授(八〇)は、長く米国を拠点にしてきた研究者だった。 米国に対する世界の信頼は、イラク戦争の泥沼にウォール街が作り出した世界規模の金融危機も重なって地に堕ちた。とはいえ、国家戦略として世界中から優秀な人材を呼び込み、それを成長の糧としてきた強さは簡単には揺らがない。二人の日本人研究者による今回の快挙も、米国が活躍の場を提供しなければ有り得なかったはずだ。 想像してもらいたい。もし、日本に移住したインド人やフィリピン人の研究者がノーベル賞を取ったとしたら……。おそらく大半の日本人が拍手を送り、日本という国が持つに至った度量の大きさを誇らしく思うのではなかろうか。

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