進化するアフリカビジネスの最前線

執筆者:平野克己 2010年3月号
タグ: 日本 中国
エリア: アフリカ

資源高の追い風を受けるアフリカだが、政治の腐敗や公共サービスの欠如は以前と変わらない。アフリカビジネスで問われるものとは――。 昨年マダガスカルに行ってきた。住友商事を中心とした国際コンソーシアムが進めている「アンバトビー・プロジェクト」の現場を訪れるためだ。GDP(国内総生産)が九十三億ドル(二〇〇八年)で一人当たりGDPも五百ドルに満たない最貧国マダガスカルに三十七億ドルを投下して、ニッケルとコバルトの一貫生産体制を構築しようという大事業である。すでに内陸部の鉱山、沿岸部の精錬工場、トアマシナ港の拡張工事、これらを結ぶ搬出路の建設が始まっている。完成すればマダガスカルは世界のニッケル生産の三・八%、コバルトの八・三%を占めるようになり、経済規模が倍増する。日本としてもニッケルの安定供給源を一つ確保できる。現下日本最大の対アフリカ投資であるばかりか、世界的にみても最大級の事業である。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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