政治の流動化をもたらす「ネット政治」

執筆者:足立正彦 2010年12月20日
エリア: 北米

 米国政治の党派対立の激化や分極化を助長する要因として、民主、共和両党における団体及び活動家の活動の活発化や、予備選挙の脆弱性、両党内における中道寄りの穏健派議員のプレゼンスの低下などについて「アメリカの部屋」では取り上げてきた。今回はもう一つの重要な要因と考えられる「ネット政治」の影響について考えてみたい。

 今年11月に実施された中間選挙で共和党の歴史的勝利が判明した直後、共和党が取り組むべき課題についてミッチ・マコーネル共和党上院院内総務(ケンタッキー州選出)がメディア関係者から問われた際、先ず口にしたのは、米国が現在直面している財政赤字削減などの喫緊の課題の克服やレイムダック会期あるいは第112議会で取り組むべき立法措置についてではなく、2012年大統領選挙でのオバマ再選阻止に向けた共和党の決意についてであった。マコーネルはそのような党内向け発言を行わない場合、共和党支持者から議会共和党指導部のオバマ政権や民主党に対する対決姿勢が「弱腰」との批判を受けかねないことを十分意識したうえで、意図的にそのような発言を行ったと推測される。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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