堕ちゆく世界の迷走 (15)

パリは燃えているか?――欧米を包む「崩壊感覚」

ついにフランスの格付けまでが揺らぎ始めた(サルコジ仏大統領)(c)EPA=時事
ついにフランスの格付けまでが揺らぎ始めた(サルコジ仏大統領)(c)EPA=時事

 ナポレオン戦争後の欧州秩序を協議した1814年から15年にかけてのウィーン会議は、小田原評定の典型である。この会議の舞台裏で演じられたロシア皇帝・アレクサンドル1世とウィーンの街娘の夢のような逢引を描いたドイツ映画が、1931年に封切られた「会議は踊る(Der Kongress tanzt)」だ。  ナチズムが席巻した欧州から新大陸に逃れたユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイクが1940年に、絶望の淵で描いた自伝「昨日の世界(Die Welt von Gestern)」。そこには20世紀初頭のウィーンの知的世界と社交界が、失われた甘美な時を慈しむ筆致で描かれている。  先進国と呼ばれる世界が今、直面しているのも恐らく同様な崩壊感覚であろう。リーマン・ショック以来の米国の停滞とギリシャに端を発した欧州の混乱は、それまで自明のものとされてきた世界秩序を大きく揺さぶっている。文明論的な分析は後回しにして、今起きている出来事を即物的にスケッチすることから始めよう。

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top