石油を最大の「政治的武器」にしたプーチン政権

油価高値誘導で採掘コストの高さをカバーする――。「価格安定」を目指すサウジ中心に動いてきた原油市場は、ロシアという新たな爆弾を抱え込んだ。「彼はとても賢明だ」。八月二十三日、テキサス州クロフォードの別邸に滞在していたブッシュ大統領はプーチン・ロシア大統領との電話会談後、上機嫌だった。プーチン大統領が原油を増産し、原油市況の押し下げに協力する姿勢を示したからだ。 電話会談の前週にはニューヨーク市場のWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油は一時、一バレル=四九ドル四〇セントまで上昇、世界は「五〇ドル原油」の悪夢におびえた。全米平均のガソリン価格は一ガロン=二ドル台に乗り、一人あたりのガソリン消費量が世界でずば抜けて多い米国社会に重くのしかかっていた。大統領選挙を十一月に控えたブッシュ大統領にとって、原油価格の押し下げは緊急の課題だった。

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