アフリカ研究では、少なくとも日本の学界では「部族」という表現を慎むのが不文律になっている。「アフリカについてのみ民族ではなく部族という用語が使われるのは差別だ」という批判が、かつてアフリカ人研究者から提起され、それに共感する研究者が増えて、国家をもたない社会集団を表すものとして「エスニック・グループ」という術語が一気に広がった(ただし、アフリカ現地ではtribeがなんの躊躇も感じさせずに汎用されている)。
アフリカ社会の特性
人類はアフリカで発祥した。なぜアフリカでしか人類は生まれなかったのかについては20世紀に著しく研究が進み、いまも精力的に進められている。人類はそのアフリカを出て地球上ほぼすべての地域に拡散することで、こんにちの大繁栄に至ったわけである。きわめて多様な環境に適応することで、単一種で70億という数にまで増殖した。ゆえに、人類は個体数が多いというだけではなく、社会の数がとんでもなく多い。そして各々の社会は、異なる環境で異なる生活形態を構築し、異なる言語と文化をもつ。創世記にあるバベルの塔の呪いである。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン