一触即発の朝鮮半島(中)「核」「ミサイル」の実態は?

執筆者:平井久志 2016年3月31日
エリア: アジア

 北朝鮮の連日の軍事的な挑発や動きをみていると、北朝鮮の行動が国際社会の視線を意識した動きであることが分かる。
 北朝鮮は米東部に到達する核兵器を保有することを目標としている。筆者がこれまでに指摘したように、北朝鮮が米東部を攻撃できる大陸間弾道弾(ICBM)を保有するためには(1)制御技術(2)射距離1万2000キロ以上(3)弾頭の小型化・軽量化(4)大気圏再突入技術――が必要とみられる。国際社会は、北朝鮮が既にこの(1)と(2)は保有しているが(3)と(4)はまだ無理だとみている。

国際社会の視線を意識した「小型化成功」

 しかし、北朝鮮はこの見方に対して異議を申し立てた。
 党機関紙「労働新聞」は3月9日付で、金正恩第1書記が核兵器研究部門の科学者、技術者たちと会って核兵器の兵器化事業を指導したと報じた。金正恩第1書記はここで「核爆弾を軽量化し弾道ロケットに合わせて標準化、基準化を実現した」と述べた。北朝鮮は2013年2月に3回目の核実験をした時に「爆発力が大きいながらも、小型化、軽量化された原子爆弾の実験」に成功したとしているが、金正恩第1書記が核弾頭の小型化成功に直接言及したのは初めてだ。
 さらに労働新聞は同日付1面に、長距離弾道ミサイルKN08の弾頭に装備するとみられる起爆装置のような円形物体の前で金正恩第1書記が幹部たちに指示をするところなど9枚の写真を掲載した。写真の1枚には、金正恩第1書記の後ろに、モザイク処理されて詳細は不明だが、KN08の弾頭部分の設計図とみられる図面もあった。写真にはKN08も4~5基が写っている。
 韓国軍は、北朝鮮の核弾頭小型化は相当な水準に達しているとみてきた。しかし、韓国国防部は今回、「北韓が小型化された核弾頭とKN08実戦能力を確保できていないと評価する」とし、北朝鮮は依然として核弾頭小型化の技術を確保していないとした。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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