12月5日に仏社会党ヴァルス首相が、そして7日にはモントブール元経済相が来年4~5月に行われる大統領選の社会党を中心とする左派予備選挙に名乗りを上げた。12月1日にオランド大統領が大統領選不出馬を公表したのを受けてのことだった。それに先立つ11月27日、保守派「共和党LR」の大統領候補選出の予備選挙では、下馬評を大きく覆してフランソワ・フィヨン氏が選出されたばかりだ。にわかに左派陣営もあわただしくなり、フランス大統領選挙はいよいよ本格化してきた。
極右「国民戦線」の影とオランド政権の人気低迷
来春の大統領選挙をめぐる議論の大きな前提は、ひとつは極右「国民戦線」(FN)が今の勢いでは決選投票に残る可能性が高い、ということである。この点は本欄でも再三紹介してきたことだが、2002年大統領選挙で決選投票に残った後、FNは低迷した。創設者のジャン・マリ・ルペン氏の時代だが、このとき党本部の建物まで売却しなければならない憂き目にあった。その後サルコジ政権時代には、サルコジ大統領の治安・移民取り締まり強化の右寄りの政策で低迷を余儀なくされたが、2010年の州議会選挙ごろから党勢を回復しはじめた。この選挙でFNは17%の支持率を獲得し、12の州で決選投票に残った(当時、州の数は本土で22州)。その後12年の大統領選挙で17.9%を獲得、14年5月の欧州議会選挙でもFNは約25%の支持率を獲得、単独第1党となった。15年12月の州議会選挙第1回投票では約28%を獲得し、全国13州のうち6つの州で第1位となった。最近の世論調査では大統領候補としてのマリーヌ・ルペン現党首の支持率は30%近くに上る。
その躍進の背景には、移民・難民増大と続発するテロなど治安の悪化によって従来からの主張である排外主義の支持者が増えたことに加え、経済・社会保障政策で行き詰まる既成政党へのフランス国民の不満がある。近代化・グローバリズム・欧州統合が進む中で恩恵を受けず、高い失業率に苦しむ地域の住民の社会不満を吸い上げることに成功したのが、FN飛躍の最大の要因だ。不満のはけ口はEUや移民に向けられる。
一方で左派・オランド大統領の人気低迷は深刻だった。大統領当選以来半年で支持率30%を切るまで人気が急降下した大統領は、これまでにいなかった。もともと社会党右派であったオランド大統領は、リベラリズム経済と社会党本来の社会保障重視・進歩派政策の間で揺れた。景気低迷、常時300万人を超える失業者数、連続テロを許した治安対策は格好の攻撃材料となった。昨年来、各世論調査1けた台の支持率に低迷していた。これではオランド氏が決選投票に残る目はない。
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