アフガン崩壊 1975年と2021年「2つの陥落劇」が変える世界

アフガニスタン東部ジャララバードを制圧したタリバンの戦闘員(8月17日撮影) ⓒEPA=時事
アメリカのトラウマ、1975年のサイゴン陥落と二重写しの光景が、いまカブールで再現される。タリバンと結びユーラシア新グレートゲームの橋頭堡を得た中国が、中東・インド太平洋への進出を加速するのは間違いない。それは地政学的なパワーバランスのみならず、人権など「価値観」の秩序も揺さぶるだろう。世界的な金融緩和で長い平和維持が行われた市場は、数十年に1度の環境激変に見舞われている。

 アフガニスタン情勢がパンドラの箱を開けようとしている。バイデン政権が米軍完全撤退の公約を実施に移すや否や、反政府勢力タリバンが大攻勢をかけ、政府軍は雪崩を打って崩壊していく。アフガンのアシュラフ・ガニ大統領が国外に退避し、タリバンが首都カブールの大統領府を占拠する。米大使館からは機密書類を焼く煙が上がり、ヘリコプターが舞い去る。

 デジャヴュ。そんな光景は多くの米国人の古傷を刺激し、バイデン政権のアキレス腱になるに違いない。古傷とは1975年4月の南ベトナムの崩壊であり、サイゴン陥落である。サイゴン陥落時の大混乱は、米国が目の当たりにした敗戦の風景である。タリバンが人権弾圧を重ねているのは周知の事実。タリバンにやすやすとカブールへの道を開いたことは、強硬派から人権派に至るまでの政権批判を誘発することになっている。

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カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
滝田洋一 1957年千葉県生れ。日本経済新聞社編集委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスター。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員などを経て現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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