2024年、辰年経済のテーマは「DRAGON」

執筆者:滝田洋一 2024年1月11日
エリア: アジア 中東 北米
[日経平均株価の終値を示すモニター=2024年1月10日午後、東京都中央区](C)時事
ウクライナで続く戦争に加え、中東情勢も混迷を深めている。地政学リスクの増幅が続く2024年は、大統領選を迎える米バイデン政権のレームダック化と「トランプ再選」による米国第一主義・保護主義復活も大きな波乱要因だ。市場では米国の利下げ時期が焦点になるが、日本がマイナス金利の解除に進んで行くのは確実だ。ただし、デフレからの完全脱却を目指す「日本版・高圧経済」のもと、金利水準は名目経済成長率より低いままとなると考えられる。おっとそんなさなかに、年初から日本株は昇り龍のように駆け出した――。2024年グローバル経済の注目テーマをピックアップ。

 

 

[D]Donald again?:バージョンアップした米国第一主義と保護主義で復活?

 2024年は辰年。英語の「DRAGON」の頭文字で、24年の課題を整理してみよう。

最初のD。「Donald again?」はいうまでもなく11月5日の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が復活する可能性である。可能性といっても、一縷の望みといった程度ではなく、相当に高いことを確認しておかないといけない。米政治サイトのReal Clear Politics(RCP)で「バイデンvs.トランプ」で戦われた場合の両者の支持率はこうなる。

 23年12月8日から24年1月9日までの世論調査の平均では、トランプ46.0%、バイデン44.8%。現職のジョー・バイデン大統領が1.2ポイントの後塵を拝している。トランプ氏が人気を博しているというより、バイデン氏があまりに不人気なのだ。24年1月9日までのRCPによる集計では、大統領に対する支持率39.9%、不支持率57.0%。支持率が不支持率を17.1ポイント下回る。

 3月にも訪米する岸田文雄首相が用意すべき励ましの言葉は「下には下があります」かもしれない。それにしても大統領選を控えたバイデン氏にとって深刻なのは、時の経過とともに支持率と不支持率の差が広がっていることだ。「相手がスネに傷あるトランプ氏でなかったら、大敗を喫しかねない」。これがバイデン陣営の胸の内だろう。

 トランプ前大統領が在任中に一族のビジネスを通して外国政府から780万ドル(約11億円)以上を受け取っていた。そんな調査資料を米下院民主党が突きつけたのは、スネの傷を突くための戦術のひとつ。合衆国憲法は大統領が議会の了承を得ずに外国政府から贈与や報酬も受け取ることを禁じている。これに違反しているというわけだ。

 中国から合計約557万ドルの支払いを受けたのを筆頭に、サウジアラビアから約62万ドル、カタールから約47万ドル、クウェートから約30万ドル、インドから約28万ドルといった具合だ。普通の政治家ならこれでアウトだろう。でもトランプ氏は反論するに違いない。ビジネスと政治は別。何が悪いのだ、と。

 あるいはトランプ氏の支持者は、ハラの中でこう思っているはずだ。敵対する中国からこれだけみかじめ料をとれるのだから、大したものだ。バイデン政権の下でグリップが効かなくなったグローバル・サウスの国々もトランプ氏の威光には逆らえなかったではないか、と。バイデン氏が21年1月のトランプ氏支持者による議会乱入を非難しても、すれ違いだろう。

[G]Gaza:溶融するバイデン大統領の支持基盤

 ここにG。ガザ地区(Gaza Strip)でのイスラエルとハマスの衝突が絡む。……

カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 1957年千葉県生れ。日本経済新聞社特任編集委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスター。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員などを経て現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top