乱暴でも意外に整合的? 「アメリカ・ファースト経済政策」で操るマネーと市場

執筆者:滝田洋一 2025年3月6日
エリア: 北米
トランプ政権は円安に不満を抱いているようにみえる[施政方針演説を行うトランプ大統領(前)に拍手を送るバンス副大統領(奥左)とマイク・ジョンソン下院議長(奥右)=2025年3月4日、アメリカ・ワシントン](C)AFP=時事
DOGEが歳出削減に振るう“大鉈”は、トランプ支持者向けのショーであると同時に長期金利を抑えている。トランプ関税による物価上振れがスタグフレーションに繋がる懸念を、財政見通しへの信頼を回復して打ち消そうという算段だ。民間部門はすでにリセッション入りと分析するベッセント財務長官も、「経済の再民営化」で供給を増やし、これでインフレを抑えるという。トランプ2.0の経済政策は乱暴だが今のところは整合的だ。ただし、それはあくまで「アメリカ・ファースト」。アグレッシブな関税や通貨政策を被弾する海外市場には、すでに漂流の気配が満ちている。

「だめだこりゃ」。いかりや長介の決め台詞のような出来事が、ドナルド・トランプ米大統領の就任以降、連続している。予測不可能な関税のトランプ砲、ウクライナ停戦を巡るマッドマンぶり……金利や株価、為替の計測計はその都度、右往左往を繰り返す。ザ・ドリフターズのような新政権の大立ち回りは、世界経済と金融市場のドリフト(漂流)を招きつつある。

GDP成長率“超急落”のカラクリと懸念

「-1.5 percent」。米連邦準備理事会(FRB)傘下のアトランタ連銀は、主要経済指標の発表ごとに実質GDP(国内総生産)の成長率予測値を発表している。名付けてGDP Now。2月28日に改定された1~3月期の予測値は、前期比年率で「マイナス1.5%」。それまでの「プラス2.3%」予想から、一気に水面下の見通しとなったのだ。

 同連銀のホームページのマイナスの符合(-1.5 percent)はとても見えにくい。最初、「-」の存在を意識せずに画面をスクロールすると、腰を抜かすようなグラフが出てきた。さらに3月3日には「マイナス2.8%」に下方改定。「トランプ・リセッション」ともいえるグラフの自由落下。一体何が起きたのか。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 名古屋外国語大学特任教授 1957年千葉県生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員、特任編集員などを歴任後、2024年4月より現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスターも務めた。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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