ロシア・ウクライナ戦争が中国の台湾侵攻シナリオに与える影響(下)

執筆者:山口信治 2022年5月13日
エリア: アジア ヨーロッパ
見えてきた台湾全面侵攻というシナリオ(C)Andreanicolini/shutterstock.com
ロシア・ウクライナ戦争は、非軍事的手段中心の「新しい戦争」による台湾統一がいかに困難であるかを中国に突き付けた。台湾統一には全面侵攻しかない――そう考えた中国はさらなる軍事力拡張に動くかもしれない。 (前半はこちらのリンク先からお読みいただけます)


 ロシア・ウクライナ戦争が始まると、中国軍事科学院の姜春良は、ロシアが精密打撃などによって防空システムやその他指揮統制のカギとなる重要施設を即座に破壊し、ウクライナ側の戦争遂行システムを麻痺させると予想していた。

 しかしロシア軍は、ウクライナの防空システムを完全に破壊して無効化するのに失敗した。その結果、飛行機やヘリコプターが多数撃墜されることとなり、作戦に支障をきたした。ウクライナ側の指揮統制は今も機能し続けている。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
山口信治(やまぐちしんじ) 防衛省防衛研究所地域研究部 中国研究室 主任研究官。専門は中国政治・安全保障、中国現代史、中国の党軍関係、米中関係。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院を経て防衛研究所に入所。2015年から現職。単著に『毛沢東の強国化戦略』(慶應義塾大学出版会、2021年、アジア太平洋賞大賞受賞)、共著に川島真・小嶋華津子編『習近平政権の目指す中国――理念・政策・課題』(東京大学出版会、近刊)、川島真編『ようこそ中華世界へ』(昭和堂、2022年)、『防衛外交とは何か―平時における軍事力の役割』(勁草書房、2021年)、『よくわかる現代中国政治』(ミネルヴァ書房、2020年)、『現代中国の政治制度-時間の政治と共産党支配』(慶應義塾大学出版会、2018年)、『中国対外行動の源泉』(慶應義塾大学出版会、2017年)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top