「平和構築」最前線を考える (40)

アフガニスタンとウクライナ:米「介入外交」思想の現在地――中山俊宏教授を追悼して

「不介入」でありながら影響力を行使するアメリカの対ウクライナ関与は、アフガニスタンの場合のような「介入」との葛藤が思想的背景にあった(写真は5月23日、ダボス会議でオンライン演説するゼレンスキー大統領)(C)AFP=時事
中山俊宏・慶大教授はアフガニスタンでの「国家建設」が挫折に終わった後、介入をめぐるアメリカの思想的確執の行方に目を凝らした。傲慢に振る舞う「力」の陥穽と、理念を基盤にして国際秩序を支える「責任」を抱え、アメリカはウクライナで新たな思想戦を続けている。

 中山俊宏・慶應義塾大学総合政策学部教授(2022年5月1日死去)と私との最後の仕事は、国際問題研究所の刊行する『国際問題』への寄稿であった。同誌の編集委員を務めておられた中山教授は、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退と、それに伴う共和国政府の崩壊を目のあたりにして、「国家建設」をテーマにした特集号を企画された。この特集号に私が寄稿することになったのであった。中山教授と、事前に問題意識を共有する会話をしたことが懐かしい。

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カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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