アメリカ保守主義が陥った機能不全:その概観とささやかな提案(下)

バージニア州シャーロッツビルで公園から撤去された南軍のロバート・E・リー将軍の銅像(2021年7月10日) (C)AFP=時事
小さな政府、減税、自由貿易、起業家精神――こうした保守の原則的な価値を、トランプ的なポピュリスト・ナショナリストは「非保守的なドグマ」だと批判する。政治の場ではこうした「反エリート主義」に応える傾向が強まるが、一方で保守主義内部の制度構築、文化的刷新の努力は続いている。分裂を克服し、「独断的イデオロギーの否定」という保守主義本来の力を取り戻すために必要なことは。(前編はこちらのリンク先からお読みください)

「トランプなきトランピズム」の模索

 そうしたことがあって、新たな保守主義の形成に向け決然として模索が始まった。それは「トランプなきトランピズム」とでも呼ぶべきものである。少し前まで、レーガン時代やその残照を浴びた保守派の代表的な思想家たちは、自分たちの哲学を当然のごとく、小さな政府、減税、自由貿易、起業家精神と結びつけていた。しかし、現時点では、右派内部からこれらの原則を時代遅れで非保守的なドグマだとして批判するポピュリスト・ナショナリストが増えている。レーガン型ポピュリズムのような政府の役割を否定するレトリックを捨て、自分たちの政策実現のために政府権力を臆面もなく、精力的に行使することを訴えているのである。こうした右派造反者の中には、グローバリズムと国境を超えた進歩的エリートを敵視し、国内の経済的・社会的崩壊に当惑し、旧世界である欧州のナショナリストや社会保守主義者に啓発や知的支柱を求めている者もいる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
ジョージ・H・ナッシュ(George H. Nash) ラッセル・カークセンター シニアフェロー。1945年、米マサチューセッツ州ホリヨーク生まれ。1967年アマースト大学卒業、1973年ハーバード大学で歴史学の博士号を取得。在野で研究、著作活動を続ける歴史家、思想史家であり、米国の保守主義・保守派知識人の歴史研究、またフーバー大統領に関する研究でも著名。主著に『1945年以降の米国における保守派知識人の運動(The Conservative Intellectual Movement in America Since 1945 )』(ISI Books, 2006)がある。同書は1976年初版で2006年版は改訂3版に当たる。
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