アメリカ保守主義が陥った機能不全:その概観とささやかな提案(上)

左翼の「WOKE(ウォーク)」を攻撃するトランプ型ポピュリズムは、同時に右派のエリートも攻撃する (C)AFP=時事
アメリカの保守主義は今ほど各派閥間での不和や激しい反目があったことはないと、米歴史家・思想史家のジョージ・ナッシュ氏は指摘する。なぜ、保守主義運動はここに至ったのか、そして今後どのような道を歩んでいくのか。「キャンセル・カルチャー」に代表される左派の過激化とトランピズムの攻撃に晒される現状を保守側からの視線で捉える。(後編はこちらのリンク先からお読みください)

 2022年現在、アメリカの保守派の多くは、自分たちがかつてないほどの四面楚歌の状態に陥り後退しているのは間違いないと見て、深刻な不安を抱いている。米国中で、連邦政府の官僚機構、ニュースメディア、エンターテイメント産業、巨大IT企業、幼稚園から大学院までの教育システムは、保守思想を敵対視するような者たちに牛耳られているからだ。ソーシャルメディアやその他の分野では、アイデンティティ政治と「ウォーク(左翼意識への目覚め)」のイデオロギーが君臨し、左翼の検閲としかいいようのない「キャンセル・カルチャー」が何のとがめも受けずまかり通っているように見える。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
ジョージ・H・ナッシュ(George H. Nash) ラッセル・カークセンター シニアフェロー。1945年、米マサチューセッツ州ホリヨーク生まれ。1967年アマースト大学卒業、1973年ハーバード大学で歴史学の博士号を取得。在野で研究、著作活動を続ける歴史家、思想史家であり、米国の保守主義・保守派知識人の歴史研究、またフーバー大統領に関する研究でも著名。主著に『1945年以降の米国における保守派知識人の運動(The Conservative Intellectual Movement in America Since 1945 )』(ISI Books, 2006)がある。同書は1976年初版で2006年版は改訂3版に当たる。
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