ウクライナ戦争が日本に突きつけた「人権国家」としての課題

執筆者:菅野志桜里 2022年6月2日
エリア: アジア
「ジェノサイド条約」にはロシア、中国、北朝鮮も含め世界150カ国以上が加盟する(写真はウクライナのブチャで虐殺された男性の埋葬を待つ親族たち=4月19日) (C)AFP=時事
対ロ制裁とウクライナ救済に迅速に動き、「行動」の外交へと踏み出した日本にとって、今後は「アジアの実力ある人権国家」として普遍的価値の体現が重要になると菅野志桜里氏は指摘する。ただし、そのためには「人権侵害制裁法(日本版マグニツキー法)」「人権デューデリジェンスの法制化」を筆頭に、「ジェノサイド条約」批准など課題は多い。(構成/名古屋剛)

日本の「行動」が評価されている

 2022年2月24日、ロシアの軍事侵攻により始まったウクライナ戦争において、日本は、アジアで最初にロシアへの経済制裁に踏み切り、また日本へ避難を希望するウクライナ人を強力に支援するなど、その貢献は国際社会から相応の評価を受けています。 

 ひるがえって、2020年6月の香港における国家安全法施行、あるいは2021年2月のミャンマーにおける国軍によるクーデター。当時の中国共産党やミャンマー国軍に対する日本政府の制裁や、弾圧された人々に対する救済は、極めて脆弱なものでした。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
菅野志桜里(かんのしおり) 弁護士。一般社団法人国際人道プラットフォーム代表理事。TheTokyoPost編集長。宮城県仙台市生まれ。小6、中1の時、ミュージカル「アニー」初代アニー役に抜擢される。その後、東京大学法学部卒。元検察官。2009年、衆議院議員選挙に初当選。その後、3期10年のあいだ衆議院議員を務める。待機児童問題や皇位継承問題、検察庁定年延長問題の解決などに取り組むほか、憲法審査会において憲法改正に向けた論点整理を示すなど、積極的に発言。2019年の香港抗議行動をきっかけに対中政策、人道(人権)外交にも注力。初代共同会長として、対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)、人権外交を超党派で考える議員連盟の創設に寄与。著書に『立憲的改憲』(ちくま新書)など。
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