やっぱり残るは食欲 (1)

具の果て

執筆者:阿川佐和子 2022年8月13日
カテゴリ: カルチャー
エリア: アジア
冷蔵庫に眠っている調味料が、味噌汁の新たな地平を切り拓くとは……(写真はイメージです)

 毎日の献立を考えるとき、一つ汁物が欲しいと、三食に一回ほどの頻度で思う。洋風のスープでもいいけれど、手軽にできるのはなんといっても味噌汁だ。ただ、味噌汁を作ることを決めたとして、さて具には何を入れようか。そこが迷いどころとなる。

 すぐに思いつくのは豆腐。あるいはワカメ。アサリやシジミがあれば、そんな贅沢なことはない。でもアサリやシジミがいいと思いついたとき、たいがい手元にアサリやシジミはない。だから買いに行かなければならない。今からですか? と、時計を見る。面倒だ。アサリやシジミを具にしたい場合は、前日ぐらいからその気になっていなければ間に合わない。当日、発作的に思いついてもダメなのだ。しかたあるまい。他の具を探そう。

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執筆者プロフィール
阿川佐和子(あがわさわこ) 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』(新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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