教養としてのイギリス貴族入門 (4)

ソールズベリ侯爵家(下)

執筆者:君塚直隆 2023年2月1日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
通算14年近く首相を務めた3代侯(左)、保守党貴族院を主導した4代侯(中)、貴族院の「ソールズベリ原則」を確立した5代侯(右)と、ソールズベリ侯爵家は英政界で大きな力を発揮した
メアリ・アメリアによって中興を果たしたソールズベリ侯爵家は、その孫のロバートの首相就任以降、イギリス政界で重要な位置を占めるようになっていった。『貴族とは何か』(新潮選書)刊行記念スピンオフ企画第4回。

 前回の連載の最後に登場した、メアリ・アメリアが築き上げたソールズベリ侯爵家に、いよいよ傑物が登場するのが19世紀後半になってからのこととなる。

苦労人だった第3代侯爵

 それがメアリ・アメリアの孫にあたる第3代侯爵ロバート(1830~1903)なのだが、彼の幼少期は悲惨なものであった。5歳のときに祖母が焼死し、9歳のときには母に早世され、ロバートの少年時代は孤独そのものであった。背が高くやせっぽちで、人見知りの激しい彼は、パブリック・スクールの名門校イートンに入学したものの、すぐに壮絶ないじめに遭ってしまう。15歳で退学し、以後はハットフィールド・ハウスへ帰り独学を続け、オクスフォード大学でのびのびと学問を楽しむことができるようになった。

カテゴリ: カルチャー 社会
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執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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