教養としてのイギリス貴族入門 (8)

ヒューム・オブ・ハーセル(一代)男爵

執筆者:君塚直隆 2023年2月25日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
伯爵位を放棄して首相、外相などを歴任したアレクサンダー・ヒュームは、一代男爵に叙せられた(CC BY-SA 3.0)
スコットランド貴族として歴史に翻弄されてきたヒューム伯爵家。その第14代は政治的に傑出しており、爵位を一代限りで放棄して首相の座に就くことになったのだった。【新潮選書『貴族とは何か』刊行記念スピンオフ企画第8回】

 1974年12月、ひとりの老紳士が一代男爵(Life Baron)に叙せられた。新しい爵位は「ヒューム・オブ・ハーセル男爵(Baron Home of the Hirsel)」。1958年に一代に限って男爵位を与えられる制度が導入され、政財界の大物だけではなく、芸術や社会福祉などで功績のあった人々が、この資格で貴族院入りする機会が増えていった。しかしこのヒューム卿は、これより11年前の1963年まで12年間にわたり貴族院に議席を持ち、活発な政治活動を続けてきた由緒ある世襲貴族(Hereditary Peer)だったのだ。いったい何があったのか。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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