教養としてのイギリス貴族入門 (9)

オルトリンガム男爵家

執筆者:君塚直隆 2023年3月4日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
『ナショナル・アンド・イングリッシュ・レヴュー』(左)に寄稿した「今日の君主制」が物議を醸した、2代オルトリンガム男爵ジョン・グリッグ(“Peer Raises A Storm”『British Pathé』より)
皇太子や首相の知遇を得、ケニア総督や陸軍政務次官などの功績で男爵に叙せられたオルトリンガム家。第2代は政治評論家・文筆家として名を馳せたが、思わぬ筆禍に遭うことに。【新潮選書『貴族とは何か』刊行記念スピンオフ企画第9回】

 1957年8月6日の夕方。『グラナダ・テレビ(現在のITV)』でのインタビューを終えて帰宅しようとする青年貴族の前に、いきなり老人が立ちはだかった。すると老人は青年の横っ面を張り倒したのだ。すぐに老人は近くにいた警察官に取り押さえられ、事態はそれ以上発展するようなことはなかった。男は64歳で極右団体「帝国愛国者連盟」のメンバー。そして彼に張り倒された青年は、オルトリンガム男爵(Baron Altrincham)ジョン・グリッグ(1924~2001)であった。なぜイギリスの貴族が右翼団体の老人から暴行を受けなければならなかったのか。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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