2023年後半に向けて燻る国際エネルギー情勢の「中国リスク」

執筆者:小山 堅 2023年3月2日
タグ: 中国
エリア: アジア
中国経済の回復見通しが強まってきた[元宵節を迎え観光客らで賑わう北京市郊外の公園=2023年2月5日](C)時事
経済成長に急ブレーキがかかったことで、昨年の中国の石油需要は32年ぶり、ガスは30年ぶりの前年割れを記録した。党最高指導部からコロナ「勝利宣言」も出た今年、中国経済の回復が市場の大きな波乱要因となるシナリオが浮上している。大規模なLNG長期契約の締結加速とともに目が離せない問題だ。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年が経過した。その前から原油、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、石炭、電力など全てのエネルギー源の価格が高騰する流れがあったが、軍事侵攻で世界最大の化石燃料輸出国ロシアからの供給に不安が高まり、経済制裁や実際の供給停止などが続く中で、国際エネルギー市場はさらに不安定化した。2022年のエネルギー環境はまさに大荒れとなったのである。

   最近は、欧州の暖冬や非ロシア産エネルギー確保が最大限の努力で進められたこと、さらには世界経済の減速の影響もあって、国際市場のエネルギー価格は昨年に付けたピークから大きく低下している。しかし、その価格は原油で80ドル前後など、未だ高価格水準だと言ってよい。しかも、この先、国際エネルギー市場で、どのような不安定要因・不確実要因が発生するのか読めない状況にある。

 最も関心が集まるのはロシアを巡る状況に他ならない。戦争の帰趨が全く見通せない中で、ロシアのエネルギー輸出に今後さらなる波乱は生じるのか。ロシアは2月に導入された西側によるロシア産石油製品に対する価格上限制度に反発し、3月から原油生産量を50万B/D削減すると発表した。ロシアからのLNG供給や、いまだ継続されているウクライナ経由でのパイプラインガス供給の行方といった波乱要因も存在する。

   ロシア以外にも、供給サイドでは米国LNGやサウジアラビア、カタールなど中東の主要輸出国の動向や政策から目が離せない。需要サイドでは、やはり世界経済の減速の影響にも留意すべきであろう。

 この状況下、もう一つ、今後の国際エネルギー情勢に極めて大きなインパクトを及ぼし得るのが中国の動向である。

エネルギー輸入が減少した2022年の中国

   世界最大のエネルギー消費国であり、最大の石油およびガス輸入国である中国が、2023年およびそれ以降、どのようなエネルギー調達状況となるのか。それ次第で国際エネルギー市場の需給バランスは巨大な影響を受ける可能性がある。端的に言えば、国際エネルギー情勢が大荒れとなった2022年、実は中国の……

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カテゴリ: 環境・エネルギー
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執筆者プロフィール
小山 堅(こやまけん) 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。政府のエネルギー関連審議会委員などを歴任。2013年から東京大公共政策大学院客員教授。2017年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。主な著書に『中東とISの地政学 イスラーム、アメリカ、ロシアから読む21世紀』(共著、朝日新聞出版)、『国際エネルギー情勢と日本』(共著、エネルギーフォーラム新書)など。
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