【Explainer】EUが「エンジン車の延命」に使う「合成燃料」とは何か

2023年3月30日
タグ: 脱炭素 EU ドイツ
エリア: ヨーロッパ
合成燃料は現在のエンジン車に使用でき、また既存の物流網で輸送もできる点がメリットだ (C)REUTERS/Fabrizio Bensch
回収されたCO2とグリーン水素を合成、エンジンで使用すればCO2を排出はするが合成時の回収分と相殺という計算。今後はガソリンなど既存の化石燃料を使用した場合には車が発進できない技術の導入なども検討されているようだ。

[ベルリン/ブリュッセル発(ロイター)] 二酸化炭素(CO2)を排出する自動車の販売を2035年に全面終了させるという欧州連合(EU)の方針に、ドイツが土壇場で待ったをかけた。合成燃料(e-fuel/イーフューエル)で走行する車両に限り、それ以降も内燃機関(ICE)を搭載した新車の販売を許可するよう求めたのだ。

*編集部注:EUは3月28日、エネルギー相理事会でドイツ政府の要求を踏まえて方針を修正した。

 EUは合成燃料限定で2035年以降もエンジン車の新車販売を容認する。

 まずは基礎的な知識から踏まえていこう。

合成燃料とは?

 e-ケロシン、e-メタン、e-メタノールなどの合成燃料は、工場などで排出されたCO2を回収し、再生可能エネルギーで生み出すグリーン水素と合成して製造する。

 合成燃料も、エンジンで使用すればCO2を排出する。ただし、その排出CO2は燃料を生産するために回収したCO2と相殺され、トータルで見ればカーボンニュートラルになるという理屈だ。

燃料は誰が作る?

 自動車メーカーの多くはすでに広く普及している電気自動車(EV)の技術に賭けている。だが、合成燃料は現在のエンジン車に使用でき、また既存の物流網で輸送もできる。部品メーカーや、ガソリン・軽油を輸送してきた企業にとっては朗報だ。こうした企業や一部の自動車メーカー、そして石油メジャーも合成燃料を支持してきた。

 合成燃料は、まだ大規模に生産されているわけではない。世界初の商用プラントは2021年にチリで開業したばかりで、ポルシェの支援を受けて年産5億5000万リットルを目指している。他にも、2024年にはノルウェーのNorsk e-fuelが航空燃料を中心に生産を開始する予定だ。

合成燃料は車をクリーンにできるのか?

 合成燃料支持派は、すべての車をEVに置き換えなくても、既存の乗用車のCO2排出量を削減する方法を提供できると主張する。一方で批判派は、……

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