ジョコ・インドネシア大統領が狙う「一族支配」、布石は着々でも存在する高いハードル

執筆者:川村晃一 2024年4月3日
タグ: インドネシア
エリア: アジア
ゴルカル党の党首にジョコウィを推す動きも[軍司令部で軍・警察高官との会談を終え、プラボウォ国防相(左)と歩くジョコ大統領(右から2人目)=2024年2月28日、インドネシア・ジャカルタ] (C)AFP=時事
「スハルト家」は民主化によって権力を失った。「スカルノ家」は民主化によって復活したが、メガワティの後は有力な政治家を出していない。「ユドヨノ家」も、息子たちに父親ほどの政治力はない。インドネシアの有力政治家一族は、フィリピンにおける大土地所有のような社会経済的資源を持たない場合が大半だ。ゆえに、政治権力を手にした途端に汚職に走る一方で、カネだけでは勝てない民主化後の社会で権力維持は容易でない。長男を次期政権の副大統領に据えるなど「ジョコウィ王朝」に布石を打つジョコ氏も、大統領の座という「公的資源」を失えば同様の逆風に晒される。

 2月14日に行われたインドネシアの大統領選では、プラボウォ・スビアント国防相とギブラン・ラカブミン・ラカの正副大統領候補が勝利を収めた。3月20日に選管から発表された開票結果では、プラボウォ=ギブラン組が58.6%を得票し、他の2候補を大きく引き離して圧勝した。

 プラボウォ国防相は、1998年の民主化以前、スハルト大統領による強権体制の下で国軍将校として台頭し、スハルトの次女とも結婚したことから、一時はスハルトの後継者と見なされた人物である。陸軍エリート部隊を率いていた際に分離独立運動や民主化運動の活動家を弾圧したという人権侵害の疑惑もあるため、大統領就任後にどのように政権を運営するのか注目されている(この点については2024年3月5日付『日本経済新聞』の「経済教室」の記事を参照していただきたい)。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
川村晃一(かわむらこういち) 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 海外調査員(インドネシア・ジャカルタ)。1970年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、ジョージ・ワシントン大学大学院国際関係学研究科修了。1996年アジア経済研究所入所。2002年から04年までインドネシア国立ガジャマダ大学アジア太平洋研究センター客員研究員。2024年からインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)客員研究員。主な著作に、『教養の東南アジア現代史』(ミネルヴァ書房、共編著)、『2019年インドネシアの選挙-深まる社会の分断とジョコウィの再選』(アジア経済研究所、編著)、『新興民主主義大国インドネシア-ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生』(アジア経済研究所、編著)などがある。
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