アルツハイマー病治療薬レカネマブは「割に合う」|伊東大介・慶應義塾大学医学部神経内科特任教授(1)
長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、慶應義塾大学医学部神経内科特任教授の伊東大介氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。
アルツハイマー病とは何か
──アルツハイマー病になるメカニズムについて教えてください。
「認知症になる要因はさまざまです。ただ、認知症のうちの6割がアルツハイマー病に伴う認知症だと言われています。ですので、今回はアルツハイマー病を中心にお話をします」
「アルツハイマー病は、脳にアミロイドβとタウというタンパク質が蓄積することによって引き起こされます。アミロイドとタウ、どちらが先に蓄積されるのか、という点についてこれまで多くの研究がなされてきました」
「最も有力だったのは『アミロイドカスケード仮説』です」
「アミロイドカスケード仮説では、タウよりも先にアミロイドが脳内に過剰に蓄積する、と考えられてきました。蓄積したアミロイドは、脳内に存在するタウタンパク質の蓄積を加速させます。タウの蓄積は神経細胞の死滅を招きます。この神経細胞死が、脳が萎縮し、物忘れなどの記憶障害といったアルツハイマー病に特徴的な症状を引き起こすとされたのです」
「2023年9月に日本の大手製薬会社であるエーザイと米バイオジェン社が共同開発したアルツハイマー病の新薬『レカネマブ』が国内で薬事承認されました。レカネマブは、アミロイドを除去する薬です」
「レカネマブを投与した患者は、投与していない患者と比較して、アルツハイマー病の進行が遅くなる、ということが治験によって明らかになっています。レカネマブによるアミロイド除去が、アルツハイマー病の進行を遅らせることができる、ということです」
「つまり、『タウよりも先にアミロイドが脳内に蓄積する』とするアミロイドカスケード仮説が、正しいということが立証されたのです」

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