
2023年は中国自動車産業にとって、大きな転換点となった。3つの歴史的な転換点を同時に迎えた1年となったからだ。
▼日本を抜いて、輸出台数世界一に
▼NEV(新エネルギー車。BEV=純電気自動車、PHEV=プラグインハイブリッド、水素燃料電池車をあわせたカテゴリ)が自動車販売に占める比率が30%を突破
▼中国市場における中国ブランド自動車のシェアが初めて過半数を超えた
この3つの転換点はいずれも関連している。どのような構造からこの状況が生まれたのか、これを具体的に解き明かすことが本稿のテーマとなる。
実は自動車輸出の主力はガソリン車
まず輸出だが、世界一奪取は「じりじりと首位を追い上げていった」ものではなく、「2021年から爆発的に伸びた」結果である。ほぼ100万台前後で推移していた輸出台数が、あっという間に500万台を突破している(図1)。
いったい、この爆発的成長は何に起因しているのだろうか? 「EV化が原動力になった」という答えが真っ先に思いつきそうなものだが、正確ではない。中国自動車工業協会が発表した2023年の輸出台数をカテゴリ別に見ると、ICE(内燃機関車)が前年比52.4%増の371万台、NEVが77.6%増の120万台という内訳だ。つまり、輸出の主力はICEなのだ。
ちなみに2024年1~5月の輸出増加率を見ると、ICEが37.5%増、NEVが13.7%増と逆転している。欧州でEVが売れている、タイでEVが売れ出した、今度はブラジルだなどのニュースが飛び交うが、2021年以降の中国のようにEV化率が一直線に上昇している国はない。充電インフラや修理サービス、保険などの社会インフラの状況や、その市場のEV支援策の変化によって左右されるためだ。欧州の中国EVに対する規制もあり、輸出の主力はICEという状況は、今後数年変わらないのではないか。
「ロシア・ウクライナ戦争で世界の自動車メーカーがロシアから撤退。その隙間を埋めた中国メーカーの輸出が伸びた」という解釈を思いついた方も多いのではないか。確かにロシア向けの輸出は伸びたが、それだけが要因とは言いがたい。

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