領土問題とナショナリズム

執筆者:平野克己 2012年10月17日
エリア: アフリカ

 時勢柄キナ臭いテーマだが、アフリカとつきあうなかで考え続けてきたテーマでもある。

 アフリカ大陸の国境線がなんだか変であることには、近代アフリカ史を勉強し始めると誰もが途端に思い至る。その理由を、19世紀末のベルリン会議でアフリカが植民地分割された経緯から知るのである。つまり、アフリカの国境線はもともとは植民地分割線であって、アフリカ人の社会とも国家とも関係ないのだ。サブサハラ・アフリカで最初に独立を勝ち取ったガーナのンクルマ初代大統領は、こんな国境は全廃して「アフリカ合衆国」を作ろうと主張していた。パンアフリカニズムである。アフリカ合衆国構想は早々に挫折したが、現在のアフリカ連合の前身「アフリカ統一機構」は、パンアフリカニズムへの配慮から「統一」の名を残していた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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