リビアがいま燃えている。日本には専門家がいないに等しい国だから、マスコミは若手研究者や駐在経験者を探しまわり、われわれの研究所も歴史や国情の断片を掻き集めて、なんとか状況を理解しようと、付け焼刃のジグソーパズルを組んでいる。
チュニジアとエジプトで起こったことは、大きな括りでいえば「市民革命」であろう。それは宗教家が先導したのではなく、部族対立でもなく、政党の出番すらなかった。カダフィによって封印されてきたリビアの部族社会がどのような展開になるかはまだ分からないが。
アラブ圏の政治はあたかも18世紀ヨーロッパにおけるフランスの如くであった。民主化の流れに後れをとり、アンシャンレジームが行き詰まり、そこに食料価格の高騰が襲う。バスティーユ襲撃前夜に、その状況は酷似していた。フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』史観に立つならば、フランス革命にしてもジャスミン革命にしても、社会が歩を進める唯一無二の道標となった「自由民主主義」が、旧態依然の権力を粉砕したということになるのだろう。フランス革命後の血腥い推移が、アラブ世界の将来に影差している。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン