開発主義と新成長戦略(その1)

執筆者:平野克己 2011年2月27日
エリア: 中東 アフリカ

 リビアがいま燃えている。日本には専門家がいないに等しい国だから、マスコミは若手研究者や駐在経験者を探しまわり、われわれの研究所も歴史や国情の断片を掻き集めて、なんとか状況を理解しようと、付け焼刃のジグソーパズルを組んでいる。
 チュニジアとエジプトで起こったことは、大きな括りでいえば「市民革命」であろう。それは宗教家が先導したのではなく、部族対立でもなく、政党の出番すらなかった。カダフィによって封印されてきたリビアの部族社会がどのような展開になるかはまだ分からないが。

 アラブ圏の政治はあたかも18世紀ヨーロッパにおけるフランスの如くであった。民主化の流れに後れをとり、アンシャンレジームが行き詰まり、そこに食料価格の高騰が襲う。バスティーユ襲撃前夜に、その状況は酷似していた。フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』史観に立つならば、フランス革命にしてもジャスミン革命にしても、社会が歩を進める唯一無二の道標となった「自由民主主義」が、旧態依然の権力を粉砕したということになるのだろう。フランス革命後の血腥い推移が、アラブ世界の将来に影差している。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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