「ドジョウ・バブル」はいつ弾けるのか

執筆者:出井康博 2011年9月8日
タグ: 日本
エリア: アジア

 野田内閣が有権者の高い支持を得て発足した。日本経済新聞の調査(9月2-3日)によれば、歴代6位の67パーセントもの支持率だという。新首相の野田佳彦が民主党代表選演説で自らを「ドジョウ」に重ね合わせたことも効果を発揮したのであろう。しかし「ドジョウ」を除いて、有権者が野田について知る情報は限られる。これほど国民に素顔を晒すことなく、総理の座に就いた政治家も珍しい。  民主党が野党だった頃、筆者は野田に何度かインタビューしたことがある。取材テーマは、野田が1期生として学んだ政治家養成機関「松下政経塾」である。当時の印象は「真面目そうだが、面白みのない人だな」という程度だった。高慢ではないが、演説で見せるウィットもない。会えば魅了されるような「人たらし」でもなかった。  野田は、創設30年以上になる政経塾から初めて誕生した首相だ。間近で野田を見てきた塾関係者に、彼はどう映っているのか。取材してみると、野田への評価は2つに分かれた。塾の同期たちは「昔から寡黙で、他人の話をよく聞く」「性格は素直で、敵が少ない」と口を揃える。しかし、後輩たちからは、 「うまいのは演説だけ」 「頭にあるのは自分の出世ばかりで、塾同期の逢沢(一郎・自民党衆議院議員)さんなどと比べても、後輩の面倒見が良いわけでもない」  といった辛辣な声が意外に多い。事実、塾後輩の民主党国会議員にも、野田グループに属する者は少数だ。なぜ、野田は後輩たちに評価されないのか。彼の政治家人生を振り返りつつ、その理由について述べてみたい。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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