20年で大きく変化した「世界華商大会」

執筆者:樋泉克夫 2011年9月20日
エリア: アジア

 世界華商大会(WORLD CHINESE ENTREPRENEURS CONVENTION)の第1 回大会は、1991年にシンガポールで開催された。呼び掛け人のリー・クワンユー(李光耀)は中華文化を共有する世界中の華人企業家に相互扶助と協力を説く一方、その成功経験を中国市場に注入して、天安門事件で頓挫しかけた中国の開放路線を後押しし、中国社会の安定的発展を呼び掛けた。彼は、これを「自然演変」と呼んだ。

 これに対し北京は、華人資本の投資は歓迎したものの自然演変には猛反発する。それというのもリーが掲げた自然演変が、共産党独裁体制に変化を強いると看做したからだ。一方、華人の投資が中国経済の発展を促し軍事的脅威をもたらすと看做したインドネシア治安当局は、華人と中国市場の結びつきに強い不快感を表明していた。かくして世界華商大会は軌道修正を迫られ、第2回香港大会(93年)では中国ではなく自らの居住国への投資を呼び掛けることとなる。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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