独裁ベラルーシを変えるか、テディベア爆弾

執筆者:国末憲人 2012年8月10日
エリア: ヨーロッパ

 最初は、笑って傍観するような出来事だった。それが、双方の大使を追い出す国際紛争にまで発展してしまった。ベラルーシとスウェーデンとの間に勃発した「テディベア爆撃事件」と呼ばれる騒動である。

 発端は、何だかとぼけた、しかし周到に準備された試みだった。7月4日、熊のお面をかぶった操縦士の操る軽飛行機がリトアニアの空港を離陸、低空飛行で国境を越え、ベラルーシに侵入した。軽飛行機は同国北西部の街イヴャネツと首都ミンスク南部の上空を飛び、ぬいぐるみのテディベア約1000個を投下した。テディベアには「今こそ言論の自由を」「言論の自由に向けたベラルーシの闘いを支援する」などと書かれた横断幕が握らされており、ベラルーシの民主化を促すパフォーマンスなのは明らかだった。軽飛行機はそのまま、リトアニアに帰還した。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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