国際人のための日本古代史 (1)

箸墓古墳でも決着しない「信仰の域」の邪馬台国論争

執筆者:関裕二 2009年10月号
タグ: 炭素 日本

 邪馬台国論争といえば、古代史の華である。だから、考古学の新たな発見があれば、マスコミが放っておかない。今年五月、纒向遺跡(奈良県桜井市。ヤマト朝廷揺籃の地)の最古級の前方後円墳「箸墓」が三世紀半ばの造営であった可能性が出てきたと発表され、「邪馬台国はヤマトか」と、大騒ぎになった。邪馬台国の卑弥呼は、二世紀末から三世紀半ばにかけての倭国の女王。当然、「箸墓が卑弥呼の墓なら、邪馬台国論争に終止符が打たれる」と、期待は高まったわけである。 けれどもこれは、新たな迷走の始まりでしかない。 箸墓の造営年代を確定したとされるのは炭素14年代法だ。炭素に含まれる「炭素14」が、五千七百三十年で半減する性質を利用して、遺物にこびりついた炭素の中の炭素14の量を測定して、遺跡の年代を割り出そうとするもので、海外ですでに高い評価を得た手法である。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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