昨年末、名古屋市で市民税を一律一〇%減税する条例が成立した。前代未聞、全国初のことである。これによって、事実上、百六十一億円が市民の手に戻ることになる。 市民税減税は、「庶民革命・脱官僚」を掲げて昨年四月の市長選に圧勝した、河村たかし市長の公約の柱だった。だが、減税は、役人、議員にとっても、自分たちの権限縮小につながりかねない。市民からは喝采を浴びたものの、与党であるはずの民主党の中でも、二十七人の議員のうち河村市長に近いと見られているのは数人で、実質的に議会はオール野党の様相。道のりは険しかった。

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