次の20年の20人 ウゴ・チャベス

執筆者:遅野井茂雄 2010年4月号
エリア: 中南米

 政権就任後十年目の二〇〇九年二月、憲法修正を問う国民投票で大統領の無期限再選が承認された。選挙に勝ち続ければ終身大統領も夢ではない。  憲 法制定議会を通じて権力を掌握し、クーデターからの復権、ゼネストで挑む石油労組との激闘、大統領罷免を問う国民投票と、反対派の挑戦と策動をことごとく 民衆動員で退けてきた。運よく石油価格の急騰にも援けられ、〇六年選挙で権力基盤を磐石とした。「二十一世紀の社会主義」を掲げてキューバと同盟関係を強 め、カストロ引退後の反米の盟主を自任する。  だが石油依存を強めた統制経済のつけは大きい。価格急落にともない再分配資源が細り、インフレ亢進 と物資不足に直面、企業の国有化と通貨切り下げで凌ごうとするが、ばら撒き経済はいよいよ袋小路に入った感がある。コロンビアを通じたアメリカによる包囲 網もじわり強まり、メディアへの弾圧、反対派への人権侵害は国際非難に晒されている。グローバル化時代の鬼子ともいえる反米の闘士の前途は、石油の値段と 得票率次第といったところだ。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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