「政争」という文脈では何でもありだろうが、今回の安保法制審議を振り返ると、戦争と軍事力の役割に関わる根本的な知見をもとに議論されたとは言い難い。米国の優れた安全保障専門家と言われるR・アーミテージ氏は、某新聞に寄稿して「国会において優れた議論が行われた」と指摘している。しかしそれは、 “Boots on the ground” を言い続けてきた思いが通ったという氏自身の納得を示したものであって、軍事を深く理解しているであろうアーミテージ氏が国会での議論を真に評価したという意味とは思えない。残念ながら、法案成立まで、議論の深化を促す軍事的識見の不足が目立ち、別けても政治家の言動には、シビリアン・コントロールへの危惧を喚起するものさえあった。

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