軍事のコモンセンス (1)

集団安全保障と憲法第9条(上)

執筆者:冨澤暉 2016年9月9日
エリア: アジア

 今般、『フォーサイト』で軍事問題についての連載を引き受けることになった。
編集者からは「リアルな軍事問題について『こう考えればいい』という指針になるようなものを書いて欲しい。言ってみれば『日本人のための軍事問題入門』になるものを」という依頼を受けた。
「いいでしょう」と軽く答えては見たものの、「これはなかなか難しいな」とも感じている。何故なら日本には軍事について内外に通じ合う共通の言葉がないからである。
 多くの日本人は「安全保障」と「防衛」と「自衛」は同じものであり、そしてその国際法上の「自衛」は国内法の「正当防衛」と全く同じものだと誤解している。また自衛隊をそれなりの軍隊だと思っているようだが、その名称を「Self Defense Force」と英語に換えて話しても多くの外人には全く理解されない、ということすらご存じないのである。
 軍事の目的は外交に寄与し平和(秩序)を構築することにあるのだが、何れにせよ軍事は相手のある国際問題なので、相手に正しく理解されなければその本来の目的を達成することが出来ない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
冨澤暉(とみざわひかる) 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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