【異能異才列伝】(1)
「無人島ビジネス」に挑む飛騨高山の若き「瓦屋」3代目(下)

執筆者:フォーサイト編集部 2017年12月30日
エリア: 日本
「無人島ビジネス」に続いて「プログラミング教室」も(クリックするとサイトに飛びます)

 

 飛騨高山でも、無人島と同時期に新しい事業を始めました。「合同会社manabi-ba(マナビバ)」という、レゴブロックの学習キットを使ったプログラミング教室です。

 このきっかけは、やはりインターネットでした。東京には子供向けのプログラミングのスクールがあるということを知り、自分の「フェイスブック」のタイムラインに「これはすごくいいな。こういうことを地元でもやってほしい」と投稿したんです。

 すると、高山出身で国会議員の秘書をしている下田学君が、「一緒にやりましょう」とコメントしてくれた。子供が同級生という事とJC(青年会議所)での付き合いだけだったので、まさか、そんなコメントがくると思わず、「えっ」と思ったのですが。ともかく「じゃあどういうふうにやろうか」ということをいろいろと話すようになりました。下田君とは今では、この事業の相方として一緒にやっています。

重要な「プログラミング」思考

 相方といろいろ話したり調べたりしているうちにわかってきたことですが、プログラミング教室の月謝は、東京だとだいたい1万5000円ぐらいで、けっこう高いんです。そうなると、収入の多い家庭の子供さんしか受講しないようなイメージになる。しかもこの金額で、田舎でできるかといったら、まず無理です。田舎だと、払えないことはないけれど相当厳しい金額です。その設定で募集しても、生徒は一定数集まらなければ採算が合わなくなる。

 かといって、やはり都心で行われているような大企業による無料教室といったものも、やはり田舎ではたぶんできない。

 そこで改めて相場を調べてみると、英語教室や数学教室の月謝が5000~6000円なんですね。ならばそこまで金額を落とせないか、ということをいろいろと考えました。

 さらに話し合ったのは、そもそもプログラミング教室で何を教えるのか、ということでした。いきなり難しいものを始めても、ロボットを組み立てるような感じにはいかないし、プログラミング言語を学ぶならばプロに教わるべきで、興味のある子供が東京で学べばいいと思う。

 それよりも大事なこと、根本は、発想力です。これがこうなったらこうする、みたいに思考を組み立てる力。自分で考える力。自分でチャレンジして、失敗したらそれを自分で改善していく力。これらを養うには、プログラミングがすごく優れています。そういうことを学べる教室にしよう、ということで、下田君との意見がまとまりました。

 日本人には、失敗してもまたチャレンジすればいいという考え方ってなかなかないじゃないですか。むしろ失敗したらダメ、何か作るにしても「最初から失敗しないように作りなさい」ということを、ぼくなども子どもの頃に教育されていました。だから、失敗したら改善していけばいい、という思考や感覚がすごく面白いと思ったんです。もしぼくがこういう感覚を持っていたら、もっと違うことを考えて実行していたかもしれないとも思いました。

 無人島ビジネスについてもそうなんですが、ぼくは「次の世代」ということを意識しています。前にも言いましたが、無人島では、ぼくたちがいろんな人とつながっていき、その成果を地元とかいろんなところに落としていって、若い子たちに人脈をつないでいくことで面白いムーブメントが起きるんじゃないか、という思いがあります。

 プログラミングについては、ぼくは、高山の子供たちが自分で考え、チャレンジし、改善していくという力、感覚を持って成長してくれたら、地域はもっとよくなっていくんじゃないかと思うんです。だから、この教室はぜひともやりたかった。

レゴを使ってスタート

 では、決して難しくなくとっつきやすい方法は何だろう、と調べていてたどりついたのが、レゴブロックでした。ちょうど下田君とお茶をしながら話していた時でした。「レゴはいいね」「まず知ってもらうには一番だね」ということになって、その場ですぐにレゴ社に電話して、「高山でプログラミング教室をやりたい」と相談しました。すると、実際に教室を行っている最大手の「株式会社ロボット科学教育」さんを紹介してくださり、今度はそこに相談をしました。

 ぼくたちとしては、こういう思想をもって教室を開きたい。高山のような地方の山間部では受講できないというのはもったいないから、ぜひやりたい。でも月謝は6000円までに抑えたい、という具合に、今から考えれば熱意だけはあるけどけっこう無茶な要望をお話したんです。

 いろいろと話し合いを重ねた末、最終的にご協力をいただけることになり、「manabi-ba」のスタートにこぎつけることができました。

 偶然なんですが、スタートは無人島と同じく2016年8月31日。こちらはHIUとは全然違って、ぼく個人で進めた事業です。1回チラシを配布しただけで、30名程度の子供たちが集まってくれました。こんなに需要があったんだ、すごいなと思いましたね。実際教室を見ると、学んでいる子供たちもすごく楽しそうです。

 ただ、この事業はできるだけ早い段階で次世代に託していきたいと思っています。現状の収益だと、講師にある程度の給料を支払えるだけのものになってきています。だったら、田舎に帰ってきた教育などへの意識の高い主婦に、副業としてやってもらうのもいいかなと思っています。そういう主婦が、田舎で働き口がないなんてもったいないじゃないですか。でも「manabi-ba」だったら、働き口を求めている意識もスキルも高い人が月2回ほど子供たちに教える、というスモールビジネスモデルにもなると思う。そういう形に持って行ければいいなと考えています。

次は「移動キッチン」?

 これからも、いろんな事業をどんどんやっていきたいと思っています。

 今考えているのは、「移動式キッチン」。これはHIUの合宿メンバー(合宿実行委員を一緒にやったメンバー)のみんなで立ち上げようと動いています。

次の「面白い」ビジネスもすでに準備中

「移動式キッチン」といっても、よくある軽トラックを改造したようなものではなく、もっと大きいもの。「キッチン」というよりは、大きなレストランが丸ごと移動するようなものです。

 今何かと話題になっていますが、これからは働き方が重要になってくると思う。そうすると余暇も増えますし、働き方も変わって、会社に所属していてもオフィスで社員と一緒にいる機会もどんどん減ってくる。そうなると会社としては、たとえば運動会みたいな社員向けのイベントをやるようになるでしょう。

 でも、人と人とが一番仲良くなれるのは、たぶん「一緒にごはんを食べる」ことじゃないですか。それが原点かなと。そういう時、この移動キッチンならいくらでもそういう需要に対応することができるわけです。たとえば富士山の麓に社員が集まる会場を設営して、そこにこの移動キッチンが行く。シェフも変えられるし、その地域の食材を使って、四季を感じられる食事をしていただく。食事を楽しみつつ社員相互の親睦を図るいい機会を提供できると思います。

 事業として考えれば、最初にきっちりと作り込んだキッチンカーを用意できれば、あとは固定費もそれほどかかりませんから、充分に収益は上げられるだろう、と考えています。それよりなにより、大きなレストランが全国各地に移動すると考えるだけで、すごく面白いですよ。

「何のため」の事業か

 ぼくの人生をもっとも変えてくれた人は、HIU(堀江貴文イノベーション大学校)の運営をしている柚木大介さんという方です。柚木さんがいろいろとアドバイスしてくださったおかげで、ぼくの感覚が大きく変わってきた。

 無人島ビジネスを始めた直後、迷った時がありました。最初のうちはなかなか収益が上がらず、しかし費用だけはかさんでいく。で、経営学とかの本を読むと、「赤字金額がここまで到達したら事業から撤退しろ」といったことがよく書いてあるじゃないですか。ぼくはそれを真に受けていました。

 どうみても収益の形を成していないので、柚木さんに「赤字がこれくらいになったら、無人島ビジネスをやめなきゃいけないでしょうか」と相談したんです。

 すると、柚木さんは言うんです。

「結局はお金の為なの? ダサッ! お金儲けしたいなら無人島なんてよくわからないものやるよりももっと早く確実なことっていくらでもあるじゃん。それよりももっと大事なことがあって、無人島を使って森くんにしかできないこと、やりたいことがあったんじゃないの? それを継続させる為のお金なんじゃないの? 森くんはそんなもんなの?」ということを、平然と言ってくれた。

 その言葉を聞いて、ぼくはハッとしました。やっぱりどんどん赤字が見えてくると、いかに金儲けをしなきゃいけないかというふうに考えてしまう。それは今考えると本当にダサい。厳しい時だからこそ、ついダメな方向に考えそうになっていたところに、「そうじゃない、何のために始めたのか」という本当に大事なことを思い出させてくれました。柚木さんは、いつもそういうアドバイスをしてくれる、尊敬する方です。さきほどの「移動キッチン」事業も、実は柚木さんに声をかてもらったのです。

 そんな柚木さんに、なぜ堀江さんのもとで働いているんですか、と聞いたことがあります。すると柚木さんは、「ホリエモンには夢を感じるからだ」と。

 ご存じのとおり、堀江さんは宇宙に行くことを目指してロケット事業に取り組んでいますよね。柚木さんが言うには、ホリエモン個人が宇宙に行くだけならそれに必要なお金を用意すればいいだけだし、すぐにできるだろう。しかし、彼はそれでは意味がないと考えている。数万人、数十万人の人間が宇宙に行くようになってようやくおもしろい変化が起こる。インターネット事業に取り組んだ時のように、人類の可能性を拡張する「新しいインフラ」を提供していきたいと考えている。そんなふうに「人類」という壮大な単位で物事を考え、そこにワクワクし、そのために夢中になれるホリエモンだから、ただの仕事以上に得るものは大きいと考えているそうです。

 事業とは、「何のためにやるのか」が大事だ、ということを改めて教えられた思いがしました。ぼくも、そういう方向を目指していきたいと思っています。(了)

 

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執筆者プロフィール
フォーサイト編集部 フォーサイト編集部です。電子書籍元年とも言われるメディアの激変期に、ウェブメディアとしてスタートすることになりました。 ウェブの世界には、速報性、双方向性など、紙媒体とは違った可能性があり、技術革新とともにその可能性はさらに広がっていくでしょう。 会員の皆様のご意見をお聞きし、お力をお借りしながら、新しいメディアの形を模索していきたいと考えております。 ご意見・ご要望は「お問い合わせフォーム」や編集部ブログ、Twitterなどで常に受け付けております。 お気軽に声をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
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