【特別対談】細谷雄一×篠田英朗「憲法と日米安保を問い直す」(3)

執筆者:細谷雄一
執筆者:篠田英朗
2019年2月6日
エリア: アジア
「自主独立」の意味にとことんこだわっていく(左・細谷雄一さん、右・篠田英朗さん)(撮影・廣瀬達郎、以下同)

細谷雄一:イラク戦争の後に、あるアメリカ人の外交専門家が、『ザ・サイレンス・オブ・ラショナル・センター』というおもしろい本を書いています。これによると、「ラショナル・センター」、すなわち「合理的な中道派の人たち」は、世の中で起きている問題についてほとんど発言しない。発言すればたたかれることがわかっていますから、発言しないことが合理的なんですね。合理的で理性的な人は、世の中にいろんなおかしいこと、間違っていることがあるとわかってはいますが、批判されたくないから沈黙する。これを続けていたら大変なことになる、というのがこの本の警鐘で、私はタイトルも含め、非常に強い印象を受けた。

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執筆者プロフィール
細谷雄一(ほそやゆういち) 1971年生まれ。API 研究主幹・慶應義塾大学法学部教授/戦略構想センター長。94年立教大学法学部卒。96年英国バーミンガム大学大学院国際学研究科修士課程修了。2000年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了(法学博士)。北海道大学専任講師、慶應義塾大学法学部准教授などを経て、2011年より現職。著作に『戦後国際秩序とイギリス外交――戦後ヨーロッパの形成1945年~1951年』(創文社、サントリー学芸賞)、『外交による平和――アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(有斐閣、政治研究櫻田會奨励賞)、『大英帝国の外交官』(筑摩書房)、『倫理的な戦争』(慶應義塾大学出版会、読売・吉野作造賞)、『戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで』(新潮選書)など多数。
執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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