欧州は「インド太平洋」になぜ、どこまで関与するか

執筆者:鶴岡路人 2021年7月21日
エリア: アジア ヨーロッパ
英空母クイーン・エリザベス(写真)の西太平洋展開は、欧州の「インド太平洋」への目覚めのシンボル (C)AFP=時事
英空母クイーン・エリザベスの西太平洋展開が示すように、欧州の「インド太平洋」への関与が急速に高まっている。自らの利益擁護と米国との協調――対中国戦略上に浮かび上がるこの2つのファクターの均衡点を、欧州はどのようにさぐって行くか。

 欧州はいま、インド太平洋ブームだといってよい。

 フランス、ドイツ、オランダなどがインド太平洋に関する安全保障戦略や政策指針を相次いで発表した。EU(欧州連合)も2021年4月の外務理事会(外相会合)で、インド太平洋戦略策定に向けた指針を採択した。今年9月には政策文書として示される予定である。また、EUから離脱した英国は2021年3月に、外交安全保障の「統合レビュー(Integrated Review)」を発表し、「インド太平洋傾斜(Indo-Pacific tilt)」を掲げた。欧州がいっきに、インド太平洋に目覚めたかのようである。

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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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