国際人のための日本古代史 (143)

スサノヲ篇(6)
出雲とタニハの瀬戸内海争奪戦――スサノヲの文明論5

執筆者:関裕二 2022年1月30日
タグ: 日本
エリア: アジア
淡路島を発って大阪へ向かう船上から北側を望む。このエリアを巡って争いが起きた(筆者撮影)
出雲とタニハによる山陰地方の主導権争いは、周囲を巻き込んで瀬戸内海の制海権を巡る攻防へと展開していった。ここでキャスティングボートを握ったのが、吉備の物部氏だった。

 スサノヲの正体を知るためには、ヤマト建国の真相を明らかにする必要がある。

 ヤマト建国のきっかけのひとつは、弥生時代後期に勃発した山陰地方の主導権争いで、出雲とタニハ(但馬、丹波、丹後、若狭)が覇を競い、その争いが瀬戸内海に飛び火した。

 本来なら、出雲は新羅やタニハと同じ悩みを抱えていたはずなのだ。朝鮮半島と日本列島をつなぐ航路を支配していたのは北部九州で、出雲も、中国に通交することが困難な「閉じ込められた空間」に位置していた。北部九州沿岸部が航路を独占している間は、山陰地方・タニハ・新羅の発展は難しかった。すると出雲は、北部九州とタッグを組んで、タニハに圧力をかけた。だからタニハは、生き残りのために、知恵をしぼって、南部近畿、近江、東海とつながっていったわけだ。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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