英「BAEシステムズ」日本法人設立:日英はインド太平洋「武器市場」で競合するか

執筆者:永田伸吾 2022年4月18日
エリア: アジア ヨーロッパ
英国が開発を進める次世代戦闘機テンペスト(C)AFP=時事
 
英航空大手「BAEシステムズ」が日本法人を設立した。日本はイギリスにとって、地政学的に重要なインド太平洋における有望な武器市場であり、防衛装備・技術協力のパートナーだ。しかし、日英が武器輸出で競合する可能性もある。

 2022年4月6日、いくつかの国内メディアが、英国の大手航空宇宙関連防衛企業「BAEシステムズ」が同年1月28日に日本法人BAEシステムズ・ジャパン合同会社を設立していたことを報じた(法人番号指定日は2022年2月2日)[1]。BAEシステムズが2022年初頭までに日本法人を設立することは昨年秋から報じられており、予定通りに実現したということであろう。

 英国にとって、日本との防衛装備・技術協力は、2010年代初頭から着手しEU離脱(ブレグジット)後の対外政策の中軸をなす「インド太平洋傾斜」の一環でもある。「インド太平洋傾斜」には、経済的機会の追求や安全保障面での役割拡大の側面があるが、両者を架橋する武器輸出の拡大も、その重要な目的の1つだからである。その意味で、BAEシステムズの日本法人設立は、英国の「インド太平洋傾斜」を象徴する事象の1つと見做すことができる。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
永田伸吾(ながたしんご) 金沢大学大学院社会環境科学研究科博士後期課程修了(法学)。ウィリアム・アンド・メアリー大学訪問研究員、ケント州立大学訪問研究員、成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員などを経て、現在、金沢大学人間社会研究域国際学系客員研究員。戦略研究学会大会委員会/編集委員会副委員長。専門分野は国際政治学・安全保障。最近の論文に、「英国の国際秩序観とそのアジア太平洋戦略:新型空母の展開に注目して」『問題と研究』第49号第3巻(2020年9月、単著)、“ASEAN and the BRI: The Utility of Equidistant Diplomacy with China and the US,” Asian Journal of Peacebuilding, Vol. 7, No. 2, 2019(共著)、「5カ国防衛取極(FPDA)とアジア太平洋の海洋安全保障:防衛装備・技術面での日英協力の視点から」『海洋安全保障情報季報』 第18号(2017年11月、単著)、『国際政治と進化政治学: 太平洋戦争から中台紛争まで』(2023年4月、共著)、『インド太平洋をめぐる国際関係:理論研究から地域・事例研究まで』(2024年1月、共著)などがある。
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