「平和構築」最前線を考える
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キッシンジャーがダボスで語った新たなウクライナの「正統性」と欧州の「均衡」(下)

ゼレンスキー大統領(右)のロシアへの抵抗が「新しい正統性」をもたらした、とキッシンジャー氏は従来の見解を「修正」した (C)AFP=時事
「正統性」と「均衡」を重んじながら、ロシアとウクライナの関係について論じる姿勢は、過去のキッシンジャー氏の言説から論理的に推察することができるものだ。ただし、実はキッシンンジャー氏は他の著作において、より具体的に、現代的なロシアとウクライナの関係について語っていた。
大著『外交』に記された民主化への懐疑とロシアの根深い拡張主義
冷戦終焉直後に出版された大著『外交(Diplomacy)』(日本経済新聞出版)執筆時のキッシンジャー氏にとって、ソ連崩壊後のロシアの行方は、大きな問題の1つであった。そこでキッシンジャー氏は、「ロシアの歴史の大部分において、ロシアは常に拡張の機会を探し求めていた」ことを重視しながら、考察を進めた(『外交』(上)14頁)。

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